1300年以上の歴史ある城崎温泉、「小宿 縁」様へサイクリストのためのコンセプトルームのための意匠をご提案。アクリルと絹障子をご採用いただきました。
| 湯けむり香る、サイクリストのための客室
兵庫県豊岡市には、多くの文人に愛された城崎温泉のほかに自然の造形が美しい山陰海岸ジオパークがあります。多様な景色を楽しむことができる「コウノトリチャレンジライド」というサイクリングイベントが毎年開かれており、その開催・出発地点である城崎温泉での交流の場、憩いの場としての旅館はサイクリストの滞在の拠点として親しまれています。そんな背景から、自転車を愛でながら泊まれる「自転車コンセプトルーム」を計画されていた小宿 縁様より、弊社へとご縁を頂きました。
| 地図のアートパネル「Tour」
絹アクリルに挟み込んだ薄絹の無地物「霞絹」には、京友禅にも用いられる染色技法「引染」を用いて、空、海の青を表現し、その上から京友禅の仕上げ加工のひとつ「金彩」でコウノトリチャレンジライドに使用される複数のコースを描きました。コース以外にも、真綿を引き延ばしてた時にできる網目状の広がりを型として利用した「真綿箔」の技法を使い、銀彩で豊岡市のシルエットを浮かび上がらせています。また、「振金砂子」という、金属箔を細かく砕いた粒子を振るい落とす技法を使い、海を表現しています。
このアートパネルは絹アクリルの透明感を活かし、室内の小窓として設置されております。後ろに設置されたロールスクリーンを降ろすと、金彩の影がロールスクリーンに落ち、奥行き感や浮遊感が感じられます。ロールスクリーンを上げると光を取り込んで部屋が明るくなるだけでなく、逆光となることで金彩が真綿箔の細かな線や砂子の繊細な表現を感じることができます。
| コンセプトルームへ誘うアートガラス
客室内以外にも、共有部である廊下部に3枚組のアートパネルをご採用いただいております。車輪をモチーフにしたデザインや、空の色を思わせるような鮮やかな青の色や暈しをご提案していく中で、空へ駆け上がるような車輪のイメージが出来上がっていきました。
左から右に向かってこれから駆け上る未来への導きと、これまでにサイクリスト達が上ってきた軌跡の2つの意味を持たせて、前へ進む象徴的な車輪を描いています。青空の下でヒルクライムに挑戦するサイクリストが助走をつけて上り始め、スピードが落ちても最後まで上りきる、大変な道のりも進みつづける姿を想像してデザインしています。特に車輪にフォーカスしているため、車輪部分には銀彩砂子のほかに、淡い金色のちぎり箔を加えるなど、精緻な表現がなされています。特に右側のパネルが進む先としてより輝きを強くなるようデザインしました。